秋ににんにくを植えた。食うにおなじでも、育てるには大別して二つある、暖地向きと、寒地向きと。で、どちらでもかまわないかと、せっかくなので二種を、買っては植え、買っては植えしたが、計画的でなかったので、ひと畝に、暖地のと寒地のとをばらばらと植えてしまった。楽観してまざってもかまわないだろうとおもった。
いまに違いがでてきた。首が短くずっしりしたのと首がひょろ長く弱そうなのとがある。これが暖地向き寒地向きのちがいによるのかはしらないが、しかしどうもこのふたつ、種類からちがいがありそうにみえる。
そもそもいま、にんにくの名でよばれているものには、二種あるそうなのだ。『農業全書』の「蒜」の項に、「にんにくにたね大小あり。大きなるたねをえらびて作るべし。」とある。そして、『野菜歳時記』では、大小の種とは「オオニンニクとヒメニンニク」であると言っている。
牧野富太郎は「不許葷酒入山門」で、『本草綱目』を紹介して、酒と肉食とともに、寺門をくぐるに禁じられていた五葷には仙家、道家、仏家によりさまざまなゆらぎがあって、とにかく臭い辛い葷菜のうちの五種を選している、という。
その五葷のなかに大蒜と子蒜というものがでていて、「すなわちこの大蒜はニンニクで一に葫と呼ばれているものである。そしてこの小蒜は単に蒜と書いてあるものと同じで、これはニンニクに似た別の品種であるが、」云々。つまり日本在来のにんにくは大蒜であり、小蒜は単に蒜とも書くように中国の在来らしく、「愚考するにこの小蒜がたぶん Allium sativum L.すなわちGarlicそのもので、」だそうだが、ではガーリックは大蒜、つまりにんにくではないということか。
では、うちの畑のほっそりしたのはガーリックで、ぶってえのはにんにくということだろうか。あるいは、ほっそりしたのはたんにやせ地にやせて育っただけかもしれない。